カヅラカタ歌劇団の今年の公演のお稽古に関わらせて頂くことになり、今年の演目である「All for One」のDVDを見た。観るまでは正直なところとても気が進まなかった。私は卒業して以来一度も宝塚の公演を観に行ったことがないしDVDもひとつも見ていなかった。見たらきっと色々なことを思い起こし考えてしまって精神的に普通ではいられなくなるのではないかと怖れて、宝塚に関連するものをあえて避けていた。しかし卒業して一年半以上経ち、必要に駆られて恐る恐る久しぶりに観てみたら、意外に、ああ観てよかったと心の底から思ったのである。心の中で避け続けていたけれど奥底では向き合いたいと思っていたものと向き合うことができて、最近感じたことのなかった清々しい気持ちになった。

宝塚の舞台はやはり素晴らしいものだった。改めて観客側から見てみると宝塚の舞台は、宝塚にしか表せない、私が子供の頃憧れていたものと変わらない魅力で溢れていた。小さい頃から聴き慣れたザ・宝塚な音楽に、理解しやすいストーリー、「わかる人だけわかれば結構です」みたいなものを感じさせない開かれた華やかさ。他にも羅列していけばキリがない。ああ私のいちばん好きなエンターテインメントはこれだった、ととても懐かしく嬉しく思った。

もちろん観ながら過去の自分のことを思い起こさずにはいられない。振り返ってみるとおそらく私は本科生の辺りから自分で自分の限界を決めつけ卑下していた。色々うまくいかなかった大元の原因の一つがここにあると思う。過食も、劇団に入ってからほど酷くはないもののその辺りの時期から兆候があった。「誰がどう言おうと自分を低く見積もってはいけない、どうせなら高く見積もれ。自分を卑下するな。頭を使え。」と昔の自分に言いたい。戻れるものなら本科生からやり直したいと思うが後の祭り。そんなことを思うに決まっているから観る気がしなかったのだ。が、一度思ってしまえば、まあ人生こんなもんだろうってなものだ。そんな思いをはるかに凌駕するほど客席側から見る舞台は華やかだった。

今まで避け続けていたけれど、小さい頃から好きで宝塚ばかり観ていた私にとって、やはり宝塚は色あせることなく光り輝く特別なものだった。永遠に存続することを心から願う。そんなことを再確認したのでまたこれから観て楽しむことができるし、なんだか心が晴れやかである。カヅラカタがなければこのまま避け続けていたかもしれない。ご縁に感謝。