数年前からお世話になっている、名古屋からは遠方の声楽の先生のレッスンを数ヶ月振りに受けてきた。いつも厳しいことを言って下さる方なのだが今回は特に厳しく2時間ずっとけちょんけちょんに怒られ続けた。こんなに人から怒られけなされたのは久しぶり。
一曲ずつの細かいダメ出しは勿論だがその他に思い出すと、

ただの独りよがりの歌。小学生の唱歌。人生苦労してきてないからこんなふうにしか歌えない。社会は甘くない。音楽に対する意識が低過ぎる。考えが甘過ぎる。これで人様に披露するだなんて、あなたは周りの人間に担ぎ上げられているだけだ。せいぜい大恥をかけ。こんな歌を人前で歌うなら私(先生)の名前は絶対に出すな。等々。

先生の仰ることは多少言い方は過激でも言いたいことはまったくその通りだと思った。延々と続くお小言に、ピアノの前に突っ立って頷きながら、最近の私は怒られ慣れてないなあと思った。一年前に退団して以来、親以外から注意されたり怒られたりしたことが殆ど無い。辞めるその日までほぼ毎日のように怒られ続けたのに、辞めた途端にピタリと誰も言う人がいなくなった。その人たちは小言を言いながら「怒られているうちが華だからね」と私によく仰っていたけれど、今になってよくわかる。基本的に、他人にその人のマイナスの部分を突きつけないことが人間関係を円滑に進めるためには当たり前の大切なことだと思う。その中で、嫌われる覚悟、自分のもとを去る覚悟を持って厳しいことを言って下さる方には感謝しなくては。そもそもそんな人は今の一般社会ではとても稀なんじゃないか(もちろんただの嫌がらせ、ストレスのはけ口にされているだけの場合もあるので見きわめが必要)。何年か前からお世話になっている先生だから、大して誰からも否定されることなくぬくぬくと暮らしている今の私の状況を見越した上で、調子に乗っている私に喝を入れて下さったのだと思う。本来は人から言われなくとも自分で気が付かなければいけなかったことをハッキリ言って下さった。

自分は何のために生きているのか、何のために歌うのか、自分の胸に手を当てて真剣によく考えなさいと先生は最後のほうで仰ったけれど、結局言いたいことはそこに集約されると思う。レッスンの始めのうちはわざわざ来なければよかったと少し思ったけれども、やはりはるばる行ってよかった。目が覚めた。初心に帰ろう。誰かを癒すことが出来る歌を歌うために。それにしても白浜の海は綺麗。