人生初のホノルルマラソンを完走し、帰りの飛行機の中で久しぶりに日記を書いている。ここ最近全く長文を書いておらずTwitterも間が空きがちだったのだがこれは書くしかない。ハワイに着いても、前日になっても、42キロも走るという実感が沸かなかったのだが、走り終わって帰国しているから不思議。

通っているランニングスクールでは事前にホノルルマラソンに出るメンバーでの集まりが何度もあり交流を深めるのと同時に、ホノルルマラソンに関する色々なアドバイスを頂いていたので、時差が19時間あり気候も日本と全然違う海外でのマラソン大会でもなんとか完走することができた。

事前準備のことから当日までの経過を長々と書いてみる。

時差ボケを早く解消しマラソン大会当日のコンディションを良くするため、日本を夜9時半に出発する飛行機の中で映画を見たりせずに寝て、現地に着いてから昼寝を絶対にしないようにとアドバイスを頂いていた。ならば飛行機の中で眠くなるために出発する前日は徹夜か相当な夜更かしをしようと思った。出発する前に頼んでおきたい用件がある友達がいて、夜電話していいかと聞くと今日は帰りがかなり遅くなると難色を示していた。が、それなら夜中まで起きて待っていられて丁度いいと思い夜中に帰ってきたら電話をかけさせてくれと頼みこんだ。そうしたら夜中の3時近くにOKと連絡が来たので電話をかけた。頼んだ用件も引き受けてもらいご機嫌の私は用件を終えた後もだらだらとほぼ1人で喋り続けた。1時間以上経って相手が電話の向こうで寝落ちしかけているかいい加減にしろと黙り込んだか、何も言わなくなったのでやっと我に返り電話を切った。こりゃもう今後電話に出てくれることはないかもしれないな。疲れているし翌日早朝に起きないといけなかったのに悪かった。でもお陰様で私はフライト中ほぼずっと寝ていることができた。ありがとう許してね。

着陸したのは現地時間午前10時ごろ。本番の前々日の朝。入国審査を終えホテルに荷物を置き、会館にゼッケンを貰いに行った。だだっ広いホールの中にゼッケンの受け取りカウンターと、沢山のランニンググッズの出店が並んでいる。日本人が圧倒的に多い。約3万人のエントリー数の半分が日本人らしい。さっそくそこで同じランニングスクールの方々とお会いした。海外は家族としか行ったことがなかったので、海外で何人もの知り合いに会うというのは不思議な気分だった。普通の旅行なら時差ボケによりホテルの部屋でバタンキューなのだがそうするわけにはいかないので、夜までアラモアナショッピングセンター(巨大なショッピングモール)をふらふらした。

本番の前日の朝にはメリーランという、1.6キロだけみんなで走りましょうというイベントがあった。私は同じランニングスクールの方々と一緒に走った。1.6㎞ハワイの海沿いの大通りを走り、走った後砂浜で記念メダルとジュースを貰うというイベントでこれも日本人が多いのだがとても盛り上がっていた。多くの人達が、日本ではそうはできないであろうテンションの高さだった。大人も子供のようにはしゃぎたいことがあるのだなと思った。ハワイはそれを許してくれる。私も思わず走りながら「アロ~ハ~!」とすれ違う人々に向かって連呼したり、普段は写真は好きではないのだが色々な人と何枚も撮ったりした。

そして本番前日の夜。当日は朝5時から走るので2時半に起きる。だから夜はフードコートで夕飯を済ませて7時に寝ようとしたが眠れないのでABCストア(ハワイのコンビニ)で小さい瓶のココナッツリキュールと牛乳を買って混ぜて飲んで寝た。寝る前にお酒を飲むと目覚めが悪くなるのだが寝られないよりましと思って飲んだが案の定翌朝2時半(真夜中だけど)は気分が悪かった。ほんとに今日走るの?と思った。しかし夜明け前の真っ暗な中ランニングスクールのコーチと生徒の方々で集まり、スタート地点近くの広い駐車場での決起集会(準備運動したり、円陣を組んだり)に参加しているうちに目覚めてきた。そしてスタートする直前のスタート地点付近の熱気がすごい。音楽がガンガン流れ、あちこちから歓声が上がる。みんな興奮している。

スタートしたら急に静かになった。朝5時。まだ真っ暗。音楽が急になくなりみんな静かに走り始めた。毎年スタートと同時に花火が上がるらしいのだが今年は10分程遅れて上がった。夜明け前の街中を巨大なクリスマスイルミネーションを見ながら走った。1時間ほど走ると空が白み始めた。街中から海沿いの道路に出て坂を延々上がった。やがて海沿いに生える椰子の木の間から、地平線から顔を覗かせる大きな太陽が見えた。景色は海からやがて山に変わり、燦々と太陽の光が降り注いできた。ハーフマラソンの21㎞以上走ったことがないのでそこからは未知の世界だった。だんだん肩と脚が凝り固まるような感覚になってくるが、どんどん景色が変わっていきそのどれもが本当に美しい。暑いけれど蒸し暑くはない。天気は抜群に良い。沿道で沢山の人が応援してくれる。確か30㎞地点付近で、「天使のそうめん」という看板を掲げて素麺を配っている日本人女性の方がいらっしゃった。現地の人がお菓子や果物を配ってくれるというのは聞いていたのだがまさかハワイを走りながら素麺とはびっくりだった。小さい紙コップにつゆと一緒に一口分の素麺が入れられているのを、食べるというより飲む。冷たい素麺のつるつる感とつゆの塩分が30㎞走ってきている身体に染み渡りまさに天使のそうめんだった。

30㎞を超えてからまた坂があった。同じランニングスクールで仲良くしてくださる綺麗なお姉さんと一緒に2人で走っていた。弱音を吐くとお互いの士気が下がってしまうと思い必死で共に前に進んだ。あと3㎞という辺りで、ビールとベーコンを配っている人がいた。私はビールのなにがおいしいのかわからないのだが今飲んだらおいしいのかなあ、と思ったがどうなるか怖いので貰わなかった。

ラスト1キロは、公園の中の直線の道路だった。遥か先にフィニッシュゲートが見えたときは、暑くて死にそうなのに鳥肌が立った。そこからの1キロはすごく長かった。ゴール地点が見えているのになかなかたどり着かない。やっとfinishと書かれた大きな門をくぐった。完走だ。ランニングスクールのコーチが出迎えてくれた。ご自分も走られて一桁台の順位で走っていらっしゃったというのに、生徒さんひとりひとりをゴール地点で待って労ってくださるとは本当に頭が下がる。まだまだこのランニングスクールにはお世話になりたいと思う。

走り終わった直後は身体が熱っているので海に入って冷やすといいと聞いていたので、脚を引きずりながらビーチに行き海に浸かった。本当に身体の痛みが少しましになった。

当日の夜はランニングスクールのメンバーで打ち上げがあった。脚は痛いし疲労困憊だったにも関わらず皆晴れ晴れとしていた。日本から同じ目的でハワイに来た仲間が集まってお疲れ様会というのは本当に楽しかった。

宝塚にいた名残りなのかなんなのか、愛とは何かについてぼんやり考えることが多いのだが、最近考えに行き詰まりいくら考えても糸口が見つからず迷宮入りしていた。あまりに答えが見えないのでもやもやとし、ツイートすることがなかなか見つからず苦しかった。しかし、ホノルルマラソンを完走して昼過ぎに脚を引きずりながらビーチに向かって歩いているときふと、見返りを期待して施す愛は愛ではない、見返りが得られないからといって注ぐのをやめた愛はそもそも愛ではなかったのだという考えが頭をよぎった。ハワイの太陽は私達が走っている間中次々と様子を変えながら全ての人々にとてつもなく大きな温かいエネルギーを降り注いでいた。ハワイの太陽が作り出す様々な自然の雄大な美しさが私達を勇気づけてくれた。愛とはそういうものなのだ。拒む人も拒まぬ人も、有り余るエネルギーで温かく包み込むのが愛なのだ。ハワイの太陽のような人になりたい。ハワイの景色があまりにも綺麗だったからなのか、初めて42㎞走ったからなのか、退団後初めての海外旅行だったからなのか、そんなことを思った。思ったというより感じたというほうが近い気がする。ホノルルマラソンに出られて本当によかった。感謝。また行きたい。