意外なところに視界が開ける入り口が見つかることがある。

新入生歓迎企画のひとつ、愛教博覧会に行ってきた。教室を使ったサークル紹介を巡り歩いていた時、アカペラサークルの方に呼び止められ、ライブをしているからと誘って頂いたので見に行くことにした。教室まで案内して頂いたその先輩は気を使って色々話しかけてくださってとても優しい方であった。そんななんとなくの流れでそのアカペラライブに訪れたけれども、それは私の今までの歌に対する意識に大きな影響を与えた。

この人たちは、純粋に音楽を、歌うことを楽しんでいた。そして、音楽は素晴らしいものだという、分かっていたようで分かっていなかったことをストレートに教えてくれた。理屈抜きにして心を動かされ、目頭が熱くなった。

自分は今まで、心から楽しんで歌っていたのだろうか。やれ音程だ、強弱だとか、そんなことにとらわれて歌っていたのではないだろうか。勿論音程は大事。表現するための歌い方の細かい工夫も必要だと思う。けれどもそれ以上に、いや下にというべきか、大元というべきか、歌う土台に、「楽しむ」ということがあるかないかで聴く側への伝わり方に大きな違いが生じる。その場の空気が、暖かく、無限のエネルギーを孕んだものに変わる。

細かいことに躍起になり、歌うことがただの作業になってしまったら、それはもはや歌ではないのかもしれない。私は多分今まで歌を歌っていたのではなく、ひたすら音符を音読していたのだろう。そのことにやっと気付かせてくれた出会いに心から感謝。

歌うにあたり、お金や仕事や立場や人間関係などどんな事情が絡もうが、根底にはこのことを忘れずに歌ってほしい。と在団中の自分にも言いたい。多分言ってもその時の自分には伝わらないと思うけど…。