弟がかつて団員だったので宝塚在団中から何度もカヅラカタの公演を観て、毎回元気をもらってきた。しかしまさか自分がダンスの指導をするとは思ってもいなかった。前回の秋公演「All for One」から思いがけず指導に入ることになり今回の公演で2公演目となる。本番1週間前くらいから熱が入ってきてぐんと良くなるというのはカヅラカタあるあるだそうで、前回も然り。しかし今回はそれだけでなく、本番1週間程前に団長兼主役の子が諸事情により退部、それをなんとかして皆で埋め合わせて公演を成立させなくてはならなかった。その熱意がとても伝わってきて更にアツい1週間であった。


私は前回の公演の時は初めての指導だったので本当に手探り状態で試行錯誤を繰り返していた。教える側は常に生徒をよく見て、自分自身や指導方法をアップデートし続けなければならないということを大学の授業で何度も学んでいるにも関わらず、今回の公演に対する自分の取り組みをお稽古から振り返ると、慣れが出てきてしまい慢心していたところがあったと反省している。私がもっと団員達をよく見て、何か異変に気付き何らかの行動をしていれば前団長はせめてこの公演を全うするまでは辞めなかったかもしれないと、退部を知った日からなにかにつけて考えている。とはいえ、急な新団長と代役が決まってからの、背水の陣で挑む団員達のやる気は凄まじかった。


本番の公演を2回とも見て、ダンス指導者として思うのは、やはり体幹トレーニングの大切さである。私はカヅラカタのお稽古メニューの中で体幹トレーニングを必ず行うようにしているが、体幹を鍛えるというのは地味で辛い作業なのでなかなか全員が真面目に取り組むということがない。しかし、いざ通し稽古や本番で衣装を来て舞台に立った時、体幹がしっかりしている子とそうでない子では確実に見え方が違う。客席に伝わってくるエネルギーの量が違うし、体力の消耗具合も差が出る。私も在団中を振り返るとそんな偉そうに言えたものでもないが、客観的に見ていると本当にそう思う。身体は簡単には柔らかくならないし、急に踊りが上手くなることもないが、体幹トレーニングは比較的早くある程度の成果が出る。また、基本的にこのまま芸能の道に進むわけではない彼らにとって、ダンスの技術などカヅラカタ限定でしか必要ないものだろうが、姿勢の良さは必ず役に立つ。良い姿勢を保つには体幹の筋力が大事なのだ。と今度話してみるか。
やる気のない子を吊し上げるとか、連帯責任にして全員が出来るまで終わらせないとか、ピリピリした雰囲気を作って絶対サボれないようにするとか、無理やり全員を動かすようなやり方が私は好きではない。本来の目的ではなく、やらないと怒られるからなどそんな理由で嫌々やったことは大して身につかないと、嫌というほどわかっている。幼稚園児や小学生ではなくもう中学高校生である彼らを縛り付けたくないし、そもそも仮にそういうやり方をしようとしたとして、それで盲目的に頑張るような人達だとは思えないのでおそらく白けるだけだろう。なんとかして、もう少し多くの団員達が地味な筋トレを自らやる気になるような方法を考えていきたいところである。


他にもこの春公演で、これを強化したらもっと良くなると思うことが沢山見つかったので、適宜レッスン方法を改善しながら秋公演が更に良い作品になるようお稽古していきたいと思う。